【東京国立近代美術館】「ピーター・ドイグ展」他

美術

6月12日(金)より東京国立近代美術館で全ての展覧会が再開

会期延長の張り紙に臨場感が溢れる。

ピーター・ドイグの日本初個展として大きな注目が集まる「ピーター・ドイグ展」の会期がスタートするやいなや、新型コロナウィルス感染拡大防止のため臨時休館することとなった東京国立近代美術館

緊急事態宣言の解除を受け、6月4日(木)に一部の展覧会が再開。
そして「ピーター・ドイグ展」も6月12日(金)から再開されたので、早速観に行ってきた。

再開後の大きな変化は、入館が「日時指定制」になったこと。
来場の際には注意が必要なので、この記事の最後に詳しく解説しようとしたのだが、
あまりにも予約方法が複雑。
別記事に分けたのでそちらをご覧ください。

「ピーター・ドイグ展」をさらに深く楽しむための予備知識

ピーター・ドイグってどんな作家?

ピーター・ドイグは1959年スコットランド生まれ(今年61歳)の画家で、現代の具象絵画においてきわめて重要な作家のひとりと言われている。

カリブ海の島国トリニダード・トバゴとカナダで育ち、1990年にロンドンの美術大学で修士号を取得。

修士号取得のわずか4年後である1994年、「ターナー賞」にノミネートされ、一躍トップアーティストとなる。

2002年よりポート・オブ・スペイン(トリニダード・トバゴ)に拠点を移す。

テート(イギリス)、パリ市立近代美術館、スコットランド国立美術館(エジンバラ)など、世界的に有名な美術館で個展を開催。
日本での個展は今回が初となる。

「ターナー賞」がどれくらいすごいか

ドイグを現代アートのフロントランナーに押し上げた「ターナー賞」。
一体どのような賞なのかを知っていれば、ドイグの評価がどれほどのレベルかよくわかる。


「ターナー賞」は、50歳以下のイギリス人もしくはイギリス在住の美術家を対象とした美術賞。
イギリスだけでなく世界の現代美術において最も重要な美術賞である。

「一般市民が新しい美術に関心を持つようになる」ことを目的に、イギリス国立の美術館・テートが1984年に設立したこの賞。
毎年極めて先鋭的なアーティストが選出され、様々な論争を巻き起こしながらもロンドン市民をはじめ全世界の注目の的となっており、美術界の「アカデミー賞」と呼ばれるほどの賞だ。


これまでに「ターナー賞」を受賞したアーティストの名前を見ると、近年の現代美術シーンを賑わせてきた有名人ばかりだ。
リチャード・ロングレイチェル・ホワイトリードアニッシュ・カプーアグレイソン・ペリーなど、日本でも知名度の高い作家が並ぶ中、最も有名な作家はダミアン・ハーストではなかろうか。

ダミアン・ハーストは、2008年にオークション落札総額が1億1100万ポンド(約211億円)に達し、1人の芸術家の作品落札総額としては最高記録を樹立した。

実はドイグの作品《のまれる》も2015年のクリスティーズオークションで約30億円で落札され、「生きているアーティストによる最も高価な作品のリスト」にハーストと並んでその名を刻んでいる。
(《のまれる》は今回会場で観ることができるので、心してご覧あれ。)

ちなみに、ドイグが「ターナー賞」にノミネートされた1994年の受賞者は彫刻家のアントニー・ゴームリー
(そう、ドイグは受賞したわけではない!ノミネートされただけでこの名誉。ドイグ、当時35歳。人生を変えた受賞だったことだろう。)
東京国立近代美術館の中に、ゴームリ―の常設展示があるので、「ターナー賞」繋がりでついでに探してみてほしい。

確かな画力に裏付けられた、不穏な魅力

筆者撮影:《ロードハウス》1991年。バーネット・ニューマンに影響を受けたという3分割の構図。

初期の作品から感じられる印象は、「すごく勉強してる画学生」。
よく練られた構図は数々の名画を想起させ、絵の具の質感にも多様な工夫が見らる。
ドイグはとても研究熱心で、テクニックのある画家なのだ。

そのテクニックを駆使して「不穏さ」を追求するところが作品の魅力になっている。
色使い、質感、モチーフのチョイスなどによってもたらされる不安定な画面は、感覚的には真似できない。

映画からの影響

筆者撮影:(左)《東京物語》2004年 (中央)《座頭市》2004年 (右)《羅生門》2005年。ドイグは日本映画からも影響を受けているようだ。

この展覧会の見どころの一つである、「スタジオフィルムクラブ」の活動については、ドイグの作品を鑑賞するうえで事前に知っておいて損は無い。

「スタジオフィルムクラブ」は、ドイグが友人と2003年より始めた映画の上映会だ。
毎週木曜日の夜にポート・オブ・スペインにあるドイグのスタジオで開かれる上映会は誰でも参加することが可能。
上映後は映画について語り合ったり、音楽ライブが始まったり、一種の文化的サロンとなった。

今回、「スタジオフィルムクラブ」の上映会を近隣住民に告知するため、ポスター代わりに描かれたドローイングが40点も展示されている。

絵画からはもちろん、映画からも多くの影響を受けているドイグの作品。
展覧会の最後にドイグの映画の好みが窺えることで、種明かしのような演出になっている。

貴重な機会をお見逃しなく!

観てきた感想としては、とても良かった
ドイグが日本映画などから影響を受けているからかもしれないが、ドイグの作品には日本人が好む世界観がある。
船、夜、森、雪などの、静かでどこか不穏なモチーフも日本人の大好きなやつだ。

でも全然じめっとしていない感じがするのは、ドイグの周りをカリブ海の風が吹いているからだろうか。
日本にはない空気感に眩しさを感じた。

貴重な展示をぜひお見逃しなく!

「ピーター・ドイグ展」

会場 東京国立近代美術館
会期 2020年 2月26日(水)ー10月11日(日)※会期延長
休館日 月曜日[ただし8月10日、9月21日は開館]、8月11日(火)、9月23日(水)
開館時間 10:00-17:00(※当面の間、夜間開館は中止)
観覧料 一般 1,700 円/ 大学生 1,100円/ 高校生 600円/ 中学生以下および障がい者手帳をお持ちの方とその付添者(1名)は無料。

◆東京国立近代美術館 ホームページ https://www.momat.go.jp/

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